役割
ヴァイオリンを人前で弾こうというとき、その演奏形態は様々なものがありますね。ソロ(無伴奏)、ピアノ伴奏付き、ヴァイオリン二重奏+ピアノ、ピアノトリオ、弦楽四重奏、オーケストラ、ソロ+オーケストラ等・・。
さて一人で弾く場合は良いのですが、人数が増えてくるとそれなりに「どう弾きたいか、どう弾くべきか」ということでいろいろな意見が出てきます。その時どう意見をまとめるか、どちらが優先されるかというのは音楽上のパートの主従関係によって決まります。
このパートとしての主従関係は演奏者の能力や地位、はたまた社会的立場等を反映するものではありません。ソロや指揮者が偉いとかいうわけでもなく、音楽上の役割として主従関係が存在するだけです。なので自分がソロを任されたときは相手が格上のピアニストやオケであっても自分に付いてきてもらいますし、逆に自分がオケのTuttiを弾くときは、たとえソロが小学生であってもいかにソロを美しく聴いてもらうかを考え、出来るだけストレスなく自由に気持ちよく弾いてもらえるようソロに対して100%のサポートをします。
しかし以前にそれを揺るがすこんな事件がありました。
僕が協奏曲のソロで弾いているとき、あるパートだけが伴奏するという場面があったのですが、どうもそのパートが重いのです。僕は少し前に行きたいので前向きに弾いていましたが、そのパートはこちらに合わせる気配すらなく黙々と刻み続けていました。なので「正確なテンポを刻んでいるのはあなたの方だとは思うのですが、そこは私のソロに付いてきて頂けますか?」と言ったところ、「ソロについてこいって? それは(音楽的に)できない。」と言うのです。その曲はソロによってテンポや動きがかなり変わるのが一般的な曲でしたし、しかもその部分はソロが主導的なメロディです。特別な何か理由がない限りはたとえTuttiが正しかったとしてもソロについてきてもらうべきものだと思い、「一応これはコンチェルトなのでソロに・・」と言おうとしたのですが、途中で話を遮られて逆に独自の理論をまくしたててくる始末・・・。
これにはちょっと驚きました。コンチェルトでソロがメロディが弾いているときはTuttiがソロに合わせるものだと思っていたのですが、Tuttiの刻みに合わせてソロを弾けと言われてしまったようなものですから・・。
しまいには「ソロのテンポに合わせることは出来ないが、最初からその部分をテンポを上げて弾くことは出来る」とすごい解決策をおっしゃるので(そこまでして自分のプライドを守りたいもの??)、仕方なしに僕がそのパートに合わせて弾き、とりあえず合わせることは出来ました。
その後もその奏者、結果的に譲歩したようになったのが気に入らないのか「そこのソロの音程がおかしいから、私の音程がとれない」などあーだこーだとはじまってしまい、声を荒げたりでもう収拾が付かなくなりました。僕より少し年上の方でそれなりにプライドがある方だったためか、もう全てが面白くなくなったのでしょう・・。僕としては本番寸前ですし、とりあえずその方にも気を静めてもらって気持ちよく弾いてもらおうと、「こんな感じですかね~。」なんてやってその場をなんとか収拾させることができましたが・・・。
結局本番は僕の方からその方に笑顔でアイコンタクトしながら、結果的にはソロをTuttiに合わせて弾きました。演奏者はアマチュアでもプロでも自分の音楽的な役割に徹して演奏しているものだと思っていたのですが、年下の若者に(若者?)指示出されて弾くのが面白くないから指示には従わない、なんてこともあるのですね・・。一応丁寧に、上から見下ろす言い方にならないように言ったつもりなんですけど・・(;_;)。
ウィーンフィルなどが、若手で自信なさそうな指揮者だとなめてかかって自分たちでアンサンブルしてしまう、なんていうのはよく聞きますが、そんな感じだったのでしょうかね?? 僕の威厳がなさすぎだったのかもしれません(笑)。でもせっかくアンサンブルするのであれば、お互いの役割に徹して良い音楽をつくっていくことが大切なのではと思いますし、一緒に演奏してきたその他演奏家の皆さんはたとえ格上年上であっても自分がソロのときは自分の指示にしたがってくれましたし、逆もまた然りでした。それが演奏者としてのプライドでもあると思うのですが・・・。もちろん立場を利用して目上の方にあまりに失礼な態度をとってしまうことはいけませんけどね。それはどこの世界でも同じですねf^_^;。
しかしこのときばかりは怒りを通り越してあきれてしまいました。こういうのはよくある話かもしれませんが、こういう時ってどうしたらよいかなかなか難しいですね・・・。まだまだ僕も青いということを実感したお話でした(笑)。
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