メニューインのコンサート・マジック
大分前になりますが、スカパー!のクラシカジャパンで放送された、「メニューインのコンサート・マジック」を観ました。
メニューインがピアニストと共にいろいろな曲をコンサート風に演奏している映像が流れていくものなのですが、この作品は映画として作成されたもので、映画館で実際に上映されていたそうです。コンサートの映像を映画館で観るというのは、ちょっと不思議な感じがしますね。
しかし、家でスカパー!の放送を見る限りはDVDを観ているのと変わらないので何ら違和感はありませんでした(笑)。
メニューインといえば、弓先での繊細なボウイングと、哀愁を漂わせるヴィブラートで聴衆を「泣かせる」ヴァイオリニストであるのと同時に、好不調の差が非常に激しいヴァイオリニストでした。そのため、メニューインのCDを1~2枚しか聴いたことないという人だと、どのCDを聴いたかでメニューインの印象が全く異なってしまうほどです。
しかし、このコンサート・マジックではもちろんメニューインの魅力満載で、どれも最高の演奏でした。
冒頭のベートーヴェンソナタ1番はわりと無難な演奏に感じましたが、バッハのパルティータ3番プレリュードなどは一つ一つの音が全て美しく、現代のバロック回帰を思わせる透明感のある響きと呼吸を感じさせる演奏とはまた違って、とても魅力的なものでした。
マタイ受難曲はまさに「泣かせる」演奏です。昔の奏者は現代の奏者よりも音に個性が強かったように思いますが、メニューインもまた独自の音色を持っていますね。同じような音色の奏者というのはちょっと思いつきません。スピード感とともに緩急のついたボウイングと独特のヴィブラートの組み合わせはまさにメニューインサウンドです。
スケルツォ・タランテラも素晴らしい。映像を観ないで音だけ聴いたらハイフェッツと間違うほど、そのテンポと勢いはすさまじいものがあります。技術の冴えもまんまハイフェッツ。メニューインはハイフェッツを相当意識していたようですが、演奏にもそれが現れていて、エネルギッシュで感動的なスケルツォタランテラでした。
その他にもパガニーニの無窮動やチャイコフスキーの「ただあこがれを知る者だけが」などテクニックと音色で強烈に訴えかけてくる演奏のオンパレード。おそらくメニューインの演奏の中でもベストに近いものばかりではないかと思います。
メニューインは神童といわれてデビューした後、スランプや体の不具合などで非常に苦しみ、晩年までずっと弓の震えに悩まされたという非常に苦労したヴァイオリニストだったため、決してどの録音も素晴らしいといえるわけではないと思います。
しかし、このコンサート・マジックはそんなメニューインがいかに素晴らしい演奏家であったかということを示していますし、また他の奏者が誰も持っていないような独特の魅力を持ち合わせています。メニューインファンはもちろん、ヴァイオリン好きの方皆にとって非常に貴重な映像であることは間違いありません。
ちなみにこのコンサート・マジックはスカパー!以外で放送されたかどうか、また今後もされるかどうかはわかりませんが、英語版ながらDVDとなって発売されているようです。特典映像であるメイキングの字幕に日本語がないのがちょっと残念ですが・・・。
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