弦楽器フェア2007 その2
その他にもいろいろ廻りました。フランスの弦メーカー「サヴァレズ社」のブースでは、通訳の方を通じてサヴァレズの社長さんとコレルリアリアンスヴィヴァーチェについていろいろお話ししました。
アリアンスは弓が弦をかんでから最初にスティックスリップをはじめるときがスムーズで、弓を返したときの裏返りが出にくいです。またガットのようなウォームトーンも魅力です。反面、雑音成分が多いために楽器によってはかなりざらつきのある音になったり(特にG線)、バランス的にもG線が他弦に対して強かったり、という気になる点もあります。
そのあたりを社長さんに伝えたところ、社長さんもなんとなく把握されている感じでした。現在サヴァレズ社は設備増強中で、来年か再来年には改良された新しい弦をリリースする予定だそうです。楽しみです。お礼にアリアンスヴィヴァーチェのマイナーチェンジ版の試供品を頂きました。これもあとで試してみたいと思います。
試奏もいろいろして来ました。片っ端から手にとって音を出していると感覚が麻痺してきてよくわからなくなります(笑)。が、良い印象だった楽器は何度か足を運んで音を出して確かめたりしました。
試奏コンサートで個人的に良かったガンさんとプロイスさんの楽器も弾いてみました。ガンさんのは弾いてみると意外とおとなしく感じますが、全体的なバランスが良かったです。プロイスさんのはその工房のモダン楽器を弾いた後に弾いたせいか、少し弾き心地が重く感じましたが、音は倍以上するモダンの楽器にひけをとらない魅力のある音でした。
その他では陳さん、番場さんの楽器が印象的でした。新作だけど音の粗さがなく、オールドのような音の丸さとパワーがある。しかも弾きやすい。陳さんの楽器はもっとバリバリとパワフルなイメージがあったのですが、今回の楽器は落ち着いていて音の丸さがありました。陳さんともお話ししましたが、まさにそういう音を目指したとのことでした。僕も最近いろいろ弾いて思うところがそうだったので、しばらく話し込んでしまいました(笑)。
ピッチノッティさんのブースではピッチノッティさん作の楽器は売約済みになっていたのでちょっと遠慮したのですが、脇にあった1948年のフレンチが良かったです。見た目的にはアウトラインも隆起もニスもちょっといまいち、というよりむしろ敬遠したくなる楽器だったのですが、妻に勧められて弾いてビックリ。G線からE線までストレスなく鳴り、音量もあり、オールドのような魅力的な音。持ち帰ってちゃんと弾いたらどうかはわかりませんが、あの場ではすごく良く感じた楽器でした。
弓ではカーボン弓が気になりました。前にも気に入ったアウクスのカデンツァ、やっぱりいいですね。通常の弓より10gほど軽いので飛ばしなどは慣れないとダメそうですが、この弓を自在に扱えたらかなり表現の幅が広がりそうです。なによりレスポンスが素晴らしい。
ヤマハのカーボン弓も試したのですが、最初弾いた弓(20万)ではこんなものかなと思っていたら、スタッフの方から別の弓を差し出されたので弾いてみたら、思いの外良かったです。ダンピングが効いているのかカーボンながらオールドボウのようなしっとり感が良く出ていて、もちろんオールドボウと同じではありませんがそれっぽい雰囲気があったので驚きました。お値段は40万とのこと。やっぱり高いんですね・・。でも40万で弓を選ぶならこれにするかも、と思わせる弓でした。
他にも、松下さん、ビソロッティさん、園田さん、など正統派で評判の方々の楽器はどれも良かったです。コンクールで賞を取ったばかりの高橋さんの楽器も弾きたかったのですが、さすがに注目度が高いようで人が多く、弾く時間がありませんでした。
全体的に日本人の製作家の方々の作品はセッティングも含めてレベルが高かったように思います。以前は明らかに鳴らない楽器や、弾いた瞬間に置いてしまう楽器もあったのですが(ご無礼をお許し下さい)、今回は良い楽器が多く、海外の楽器よりもむしろ日本の楽器を好んで弾いたくらいです。200万以上する海外の作品を買うのであれば、100~150万ほどで国内製作者の作品を探した方が良い楽器に出会えるように感じました。
なお、量産楽器クラスもいくつか試しました。最近の「のだめ」ブームでケースがブレイクしたイーストマン、楽器も前から出していますが今回初めて触ってみました。グレードによる差が非常に大きく、いい楽器はいい、という印象。最上位の40万のはすごく良かったのですがその下のがちょっと今ひとつ。個体差が大きいのか、モデルにより当たり外れがあるのかわかりませんが。また出品される楽器にしてはペグの調整がどれもいまいちでした。数台弾いた後にはペグ回しですっかり左手が痛くなりました。40万の楽器は本当に好印象だっただけに、惜しいですね。
ジェイハイダのアランシェンヌ(30万)も弾きました。やはりジェイハイダは良くできてます。数本見ないと個体差などはわかりませんが、弾いた楽器はパワーもバランスも良く、ペグなどのフィッティングもしっかりしていました。こちらはピグマリウスなどと同じく、安心して買える楽器かもしれません。以前そのコストパフォーマンスに驚きましたが、今回も非常に好印象でした。ジェイハイダやGewaのような楽器が増えてくると入門クラスの選択肢が広がって良いですね。
また来年も楽しみにしています。
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