ザイエックスLight レビュー
米ダダリオ社のヴァイオリン弦「ザイエックス(Zyex)」は、非常に強いテンションを持つ弦でヴァイオリン弦としては最強の部類に入ります。
しかしその強すぎるテンション故に楽器との相性が難しく、多くの楽器ではパワーよりも反応の鈍さや弓圧の重さが目立ち、弾きにくいという印象があります。テンションの強さもパワーに結びつかず、エヴァピラッツィやヴィジョンチタニウムソロの方が音量が出る場合も多いですし、むしろ音が詰まってしまうケースが多いようです。
ということであまり使われない弦となってしまっているザイエックスですが、良い面もあります。まずは価格。ユーロ高でピラストロやトマスティークなどの弦が軒並み値上がりしている中で非常に割安感があります。ダダリオのラインナップでは最も高価で高級弦に位置するザイエックスは、エヴァピラッツィやオブリガートはもちろん、ドミナントやヴィジョンよりも安価に購入できるというのは魅力です。
またザイエックスはトマスティークやピラストロの弦に比べて非常に暖かみのあるリッチな音色を持っています。ややざらつきを伴う弦ではありますが、楽器によってはむしろそれが良い味になる場合もあります。コレルリアリアンスヴィヴァーチェに少し似ているかもしれません。弦が暴れにくく過敏でないというのも良いところです。
寿命が長いのも特徴です。2ヶ月くらい経ってもオブリガートやエヴァピラッツィよりも劣化が少なく、アリアンスヴィヴァーチェと同じくらい持つような気がします。
つまり、デメリットのほとんどはテンションの強さから来ているような気がしていたザイエックス、もしかしたらLightテンションならベストの弦にはならなくとも安くて結構使える弦だったりしないかと思い、ザイエックスのLightテンションを取り寄せて試してみた次第です。前置きが長すぎてすみません。
まず結果からいうと、予想通り「結構使える弦」でした。
LightのG線はオブリガート(4.6kg)やドミナント(4.5kg)よりもテンションが低い4.3kgですが、意外としっかり感があります。音量はヴィジョンチタニウムなど比べてもやや弱いというくらいで、テンションのわりには結構パワーがあります。反応もmediumの時のような鈍さはあまり感じず、弾きやすさも悪くないです。
D線はのテンションはオブリガートのシルバー(4.4kg)やドミナントのシルバー(4.5kg)に比べてやや強めで、ヴィジョンチタニウムと同じ4.7kgあります。が、弾いた感じはテンションが強いわりには印象が弱いというか、おとなしい感じで音量もヴィジョンチタニウムに比べると明らかに落ちます。ちょっと詰まったような音もしますが好みの範疇かもしれません。もう自然に少し鳴ってくれるといいのですが、圧力をかけていったときの懐の深さはあります。
A線はパワーもあり、豊かな音色です。テンションはオブリガート(5.6kg)やドミナント(5.5kg)と比べても弱めの5.3kgですが、軽い音ではなく落ち着いていて音に芯があります。G線同様なかなか好印象で、反応も悪くなく過敏でもありません。
ということで総じて「そこそこ良い」という印象。mediumの時に感じたような鈍さはなく標準的な反応、逆にドミナントやヴィジョンチタニウムなどよりは過敏さが大分抑えられています。音色もそれらのオープンな音に比べると落ち着いた音。弾きやすさやバランスはそこそこです。
ザイエックスLightは価格も安いし寿命も長く、弾きやすさや音量、音色もまずまず。音の傾向さえ気に入れば結構使える弦ですね。というか、ザイエックスは今のゲージ表示Light,Medium,StrongはそれぞれMedium,Strong,Very Strongという名前に変えて今のLightを標準ゲージとして売った方がいいのではと思います。Lightでも十分な強さがありますし。
本番で使いたいかといわれればやはり一番気に入っているエヴァピラッツィを迷わず選びますが、ドミナントのようなオープンな音が嫌いで、かつ安くて長持ちする弦を求める場合、ザイエックスLightは結構良い選択肢になりそうな気がします。
このまま普段の練習用として気に入ることが出来れば価格的にもかなりおいしい弦ではあるので、しばらく使ってみる予定です。しばらく使うと印象が変わるかもしれないので、またそのうちレビューしたいと思います。
<参考>
■ 弦の張力データ(silver-tone.com)
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