ギドン・クレーメル バック・トゥ・バッハ
日曜日の深夜にBS2で「ギドン・クレーメル バック・トゥ・バッハ」という番組を放送していて、録画して観ました。
内容は、クレーメルへのインタビューを通じてクレーメルの足取りをドキュメンタリー形式で振り返り、バッハの無伴奏パルティータのレコーディングメイキング風景、そして最後にパルティータ全曲演奏、という構成です。
僕はクレーメルがとても好きで、過去に来日した時に二度ほどコンサートに足を運んでいます。パガニーニの再来かと思わせるほどのテクニック、鋭く冷たいエッジの効いた音色と暖かくふわっとしたやわらかな音色のコントラスト、そして強烈な個性が彼の魅力です。
クレーメルはとても変わり者で、ある意味変人かもしれません。天才というより鬼才という言葉がふさわしいでしょう。でもそれがクレーメルの魅力でもあります。
今までクレーメルの素顔というのはあまり知らなかったので、とても興味深い番組でした。クレーメルの強烈な個性が最初は受け入れられなかったこと、才能をオイストラフに見いだされたこと、自由な活動が出来ずに西側に亡命したことなど・・・。
バッハのレコーディングでは演奏する上でのクレーメルの素顔が垣間見えました。いかにも神経質そうですが実際そうで、パルティータ3番プレリュードの最後を何度も「ダメだ!」といいながら弾き直していました。
しかしクレーメルの演奏は本当に凄いですね。全身全霊を傾け、フォルティッシモからピアニッシモまでありとあらゆる音でバッハに向き合い、そして自分の個性も最大限に生かしてバッハを表現していく姿は、鬼気迫るものがありました。毎日聴きたい演奏ではありませんが、やはりクレーメルのバッハは外せない演奏の一つでしょう。
バッハに対するクレーメルの音楽感にも非常に興味深いものでした。
"ホテルの一室にたった一人でいてもバッハを弾くときは孤独ではない。常にバッハと対話しているのだから。"
演奏家に対して個性の必要性も述べていました。
"楽曲を演奏家が演奏しそこに彼らの声が聞こえたときに、はじめてその音楽を信じることが出来る。"
なるほどなと思いました。よく、音楽は誰のものであるかとか、誰のために演奏するかとか、演奏家はどうあるべきか、などという話がありますが、クレーメルの言葉はとても共感できるものでした。
最後にこのようなことも言っていました。
"演奏家は次々と世代交代をしていくが、バッハやベートーヴェンといった音楽は永遠。バッハをどう弾くべきか、それは永遠に謎であり続けるだろう。"
ドキュメンタリーの後にパルティータ全曲の演奏が収録されているのですが、こちらは中途半端にしか観ていないので、また時間があるときにでもじっくり観てみたいと思います。
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