NHKホール「こころコンサート」 ~山崎善信さんと その1
少し前になりますが、3/7はNHKホールでコバケンとその仲間たちオーケストラ、およびスペシャルメンバーによる「こころコンサート」が行われました。
コンサートの詳細については過去の記事に詳しく書きましたが、ここでは練習から当日まで同じプルトを組んだスペシャルメンバーでヴァイオリン演奏家の山崎義信さんと過ごした時のことを書きたいと思います。
それまでの仲間オケのコンサートでは様々な障がいをお持ちの方を「客席」にお呼びし、演奏者と聴衆という立場で同じ音楽を共有しノーマライゼーションを広めるという活動をしておりましたが、NHK公演では知的、あるいは身体的に障がいをお持ちになりながらも音楽家として演奏活動をしていらっしゃるかたを「スペシャルメンバー」として、演奏者として同じステージに立って同じ音楽を奏でることとなりました。
善信さんとはじめて一緒にプルトを組んだのは2009年9月か10月の練習だったと思います。事前にスペシャルメンバーのプロフィールを拝見はしていたものの、人数も多くお一人お一人を把握していたわけではなかったので、全く前提知識なしのご対面でした。
善信さんは自分より5つ年上でやや私よりも大柄な男性。弱視と軽い自閉症をお持ちですが、いつも優しそうな表情。
最初は試行錯誤の連続でした。まず善信さんがどんな方なのか、障がいはどのようなものであるか、ヴァイオリンの演奏技術は、アンサンブルの経験があるか、など全くわかっていなくて、またそれを変に把握しようとしてしまって、自分のほうがコミュニケーションを取る上でぎこちないものとなってしまいました。
しかしやはり音楽家同士。通じ合うのは音楽からでした。マエストロからの「そこはしっかり音を切って」という指示に対し、僕は「ここは弓をしっかり乗せてから・・」と奏法を説明しようとしたところ、「マルトレで弾けばよろしいですね」という演奏用語。あ、この方は演奏家なんだ、普通に音楽の言葉で会話すればいいんだ、ということに気付かされました。
それからは会話もだんだん弾むようになり、「そこのサルターレはほとんど音にしないで」というマエストロの指示に対して善信さんの音が大きすぎた時も、「しーっ、もっと静かに・・・」「ナイショ話みたいですね」「あ、いいこと言いますね、そうですここはナイショ話ですよ」と、むしろこちらが善信さんの上手い表現に笑みを浮かべてしまうこともありました。
また善信さんは通常の演奏ポジションからは楽譜が見えないため、「次はAから」などと次に弾く場所を指示されたときは楽譜に顔をぐっと近づけて確認するのですが、そうすると視界に入る楽譜は一部になってしまうので探すのに時間がかかることもありました。僕がここですよと指をさすとさっとそこに顔を持って行きすぐに楽譜が確認できるようになり、そうした連携にも次第に慣れてきました。
しかし時には余計なことも。楽譜は自分用と善信さん用と同じプルトながらそれぞれ目の前に譜面台を立てていて、次のページに進んでも善信さんが楽譜がめくらないことがあり、気を利かせて善信さんの分もめくったりしていました。が、僕がめくらない時も善信さんは普通に弾いています。善信さんは楽譜を全て暗譜していたのか! 一応確認すると「大丈夫です、覚えてますから」とのこと。むしろ自分のほうが楽譜にかじりついていて恥ずかしかったです(笑)。
善信さんはほとんどの楽譜をほぼ完璧に暗譜しており、入りなども完璧でした。楽譜を完璧に覚えるのはともかく、入りまできっちり覚えていらっしゃるのには驚かされました。お母様が毎回練習のあとご挨拶にみえ、「しっかりやっておりましたか?皆様に御迷惑おかけしておりませんか?」と心配されておりましたが、全くその心配はなく、自分があまりさらっていなかった曲を隣でスラスラと弾いている姿は頼もしいくらい。
とはいえ、さすがに耳で覚えた部分も多いためか、楽譜の読み間違いや、強弱の注意などでなかなかオケの練習中ではカバー仕切れないところも出てきました。お母様と相談し、コンサートの前日にレッスンを行うことになりました。
その2へつづく。
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