PEDI チタンアジャスター

Marcello Iveを手にして最初に交換したいと思ったのがアジャスターでした。Hillのものが付いていたのですが、好みうんぬんというより使い込まれていてネジ部が偏心を起こしてそろそろ限界のようでしたので・・・。

今まで自分の楽器にはGotzのゴールドを付けていましたが、今回はPEDIのチタンアジャスターを試してみました。購入先は楽天市場のバイオリンJPさん。

このアジャスター、ちょっと面白くて土台とアームが別パーツではなく一体化されています。チタンのパーツのしなりを利用する構造になっているため、可動部で変な振動が出にくいようです。またチタン製のため非常に軽量です。

軽いことが音に必ずしも良いというわけでもなく楽器との相性もあるのですが、取り付けてみたところE線の鳴りが良くなり倍音も増えました。ブリリアント傾向です。楽器がうちに来てすぐに0.26mmの弦を張り、下の弦が鳴るにつれE線が物足りなって途中から0.27mmくらいの弦を張っていたのですが、少しゲージを落としてもいいかなと思えるほどです。少し耳には刺激的な音が増えましたが、元々楽器がE線が耳にやさしいのでちょうど良いくらいです。

E線はゲージを上げると音の張りは増しますが、神経質になる面もあり弾きにくくなったりむしろ発音が悪くなって音量が落ちたりします。またE線のゲージを上げるとE線以外の鳴りは悪くなる傾向があります。PEDIのチタンアジャスターに換えたときはゲージを上げた時に比べてそのデメリットがあまりなく、音の張りと倍音を増すことができる感じでした。

Wittnerのようにアームがテールピースの前方に出ているのですが、アーム上部が斜め後ろにオフセットしていてテールピース側の弦長を確保しようという意図が感じられます。HillやGotzは4弦が揃っていることを考えるとこれは良いアイデアかと思います。もっとも揃っているのが良いかどうかは定かではありませんね、非対称テールピースとか出ているようですし・・。

「PEDI チタンアジャスター」

気になったのは少しアームが高すぎて、弦の取り付け位置が若干高くなることです。結果的には弦同士の力の釣り合いによってE線の駒への圧力が減り、Aの圧力は高くなり、D、Gの順に圧力下がる、というところでしょうが、それが理論上良いと思われる寸法なら良いのですが、そうでないならまずはWittnerやHillと同じく高さも揃うほうが良かったように思います。まあこれは両方試してみないとわかりませんし、結果的に自分の楽器では好印象だったので良しとしましょう。

弦を引っ掛けるフックの部分はボールでもループでも使えるようになっていますが、ループを掛ける場合もエッジがある程度丸められているのでループが切れる心配が減っています。Hillなどはエッジが立っていて、自分でヤスリで丸めないとしばらく使って弦によって削られて丸くなるまでループが切れまくりますからね。まあでもせっかくなのでPEDIももう少し丸みを付けてくれるともっと良かったかなと思います。ループが切れない、が謳い文句に出来るかもしれません。

アジャスターは楽器によって重くしたほうが良い場合と軽くしたほうが良い場合があるようですが、今回自分の楽器にはPEDIのチタンアジャスターは正解でした。私の楽器にはローズウッドだかブラックウッドだかの質の高そうな（Crowson？B&C？）テールピースが付いていますが、今のところ相性は良さそうです。相性もありますが、基本的にはE線の鳴りがもっと欲しい場合には良い結果をもたらしてくれると思います。

もちろん万能ではなく、生徒の中にはすでに試した方もいてあまり良い結果が得られなかったそうです。弦と同じく一度試してみないと相性はわかりませんね。

ちなみにこのチタンという素材、自転車をやっているとわかるのですがカーボンなどと同じく振動吸収が優秀な素材です。音質変化の傾向は軽さだけではなく、チタンの特性もあるかもしれません。

そうそう最後に回し心地。HillやGotzは個体差がひどくて、グリス、オイル、鉛筆など試してもダメなこともありましたが、PEDIのチタンスクリューは実にスムーズです。アジャスターといえば固いネジを手が痛くなりながら回す、というのとは無縁になりそうです。

他にもB&Cのカーボンアジャスターなども興味あったのですが、あれは弦の交換がものすごくやりにくそうで却下しました。アジャスターの下側の表板を傷つけそうです。

アジャスター交換の際はアジャスターの角で表板に傷をつけやすいので、このようにかならずクロス等で覆って作業します。

「アジャスター交換の時はクロスを敷きましょう」