楽器の駒&魂柱調整に挑戦 その2

ヴァイオリン

前回は生徒さんの入門楽器を調整しましたが、その後もいくつか作業を行いました。

<イーストマンVL80>

イーストマンVL80
「イーストマンVL80」

こちらも生徒さんの楽器で、当初より鳴りが悪かったのですが価格も価格ですし(本体約4万、セット6万)、仕方ないかなと諦めておりました。入門楽器として優秀なピグマリウスのSTANDARDや旧DV90などは、作りも音も実に素晴らしいですが価格は倍以上ですし。

ですが先日のカルロジョルダーノの例もあったので、生徒さんから楽器をお預かりしてチェックしてみました。板は非常に厚く楽器も重いので構造上どうしても板が振動しにくく、弾いてみると音量はピグマリウスの半分くらいに感じます。音のフォーカスも甘くモコモコします。

が、魂柱の位置を確認するとこんなに鳴らしにくい楽器なのに駒から遠い。名刺を半分に切ったものをf字孔から差し込んで魂柱の前面に当てて駒との距離を測ると5mm強。これではますます鳴りません。

Gemini Soundpost Setter
「Gemini Soundpost Setter」

早速弦をゆるめたところ、すぐに魂柱が倒れてしまいました。相当ゆるかったようです。Gemini魂柱立てで慎重に駒に寄せて立てなおしてみました。2.5mmくらいの位置に立ててから弦を張り、弾いてみると明らかに鳴りが良くなってきています。魂柱を若干キツめに入れてさらに音量アップ。音のフォーカスも改善しました。

Gemini魂柱立てと通常の魂柱立て、レトリバー
「Gemini魂柱立てと通常の魂柱立て、レトリバー」

板が厚いからか、魂柱を動かしたことによって弦が暴れたり神経質になったり鳴らしにくくなるようなこともありませんでした。

あとは駒のE線にパーチメントが貼ってなくて弦のチューブを使っていたので、パーチメントを水に濡らして駒の形に曲げ、瞬間接着剤で貼り付けました。チューブを外して弾いてみましたが、こちらもまた音がクリアになりました。

イーストマンVL80
「イーストマンVL80」

こちらの楽器は魂柱の移動と駒のパーチメント貼りを行いましたが、手間をそれほどかけずにかなり音質が改善しました。生徒さんにも喜んで頂き、私も良い勉強をさせて頂きました。

<モダンイタリアン>

生徒さんの某モダンイタリアンですが、音がクリアで明るく、ブリリアントでパワーもある素晴らしい楽器です。A線とE線がカーンと気持ち良く鳴るのが魅力的で、生徒さんも私、そして店主の満場一致でご購入となった楽器です。

モダンイタリアン
「モダンイタリアン」

非常に良く鳴るのですが魂柱の位置は駒から5mmとかなり遠目でした。でもこの位置で非常に良いバランスですし、あえて変えないほうが良いと思っていたのですが、生徒さんが他店に楽器の修理に出した時についでに魂柱を通常の位置に移動されてしまったようで、弾いてみたらカンカンキンキンで耳が痛い・・・。

お店の方からはこの方が良いはずと言って渡されたそうですが、実際に弾くと耳が痛いしキンキン鳴るだけで音色の良さがまるでなくなっていました。まあ音量は確かに上がっていましたがもともと音量は十分にある楽器なので・・。

測ってみると魂柱位置は駒から2.5mm。本来なら標準の範囲内ですがこの楽器には明らかに近すぎるようです。生徒さんもお店に持っていく時間もないとのことでしたので、私の方で魂柱を動かすことにしました。

E線とA線をゆるめ、魂柱立てを魂柱に触れると・・・コロン・・・。魂柱が倒れました(笑)。というかこれは明らかに緩すぎでは?音は鳴るけど板が振動する感じがなかったのはこのせいか・・。

Gemini魂柱立てを使って立て直したのですがなかなか大変でした。魂柱が6.5mmと太く、取り出すのも入れるのも大変でした。レッスン中だったので生徒さんを待たせて魂柱を立て直しになったのは申し訳ないのですが、高価な楽器ですのでエンドピン穴からのそきながら丁寧に作業して無事5mmのところにセット出来ました。駒から離れていることもあり、魂柱のきつさもややきつめにしました。

出来上がって弾いてみると・・・あの音が戻ってきた!パワーもそんなに落ちてないし、むしろ板がしっかり鳴ってくれて明らかに良い感じ。G線D線ではほんの少しルーズで響く感じが出て、A線E線はきらめくようなイタリアントーン!

本当はお店で直してもらえば良いのですが、そもそも生徒さんの説明にもかかわらずその位置に立ててしまったお店に、こちらの要望通りに魂柱を立て直してもらうのはなかなか難しいかもしれません。

ただ、楽器店や職人さんは楽器のプロではありますが音のプロではないので、最終的な判断はやはりプレーヤーが行うべきです。その辺、私から生徒さん経由で具体的に調整内容をお店に伝えてしっかり希望通りの調整をしてもらえるように、私も楽器について勉強しなければと思った次第です。

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