カヴァコス モーツァルト・ヴァイオリン協奏曲集
カヴァコスのCD、モーツァルトの協奏曲集も買ってしまいました。
まず思ったのが演奏スタイル。今まで聴いたカヴァコスの演奏とはまた違った興味深い演奏でした。最近のバロック指向、原典指向とでもいうのでしょうか、音のつなぎやフレーズの取り方が響きを意識したものになっており、ヴィブラートも控えめで、ボウイングのダウンとアップの音質の違いが明確に出ている演奏でした。
オイストラフやシェリングなどの古い録音だと音から音へは出来るだけ音を持続させ、ヴィブラートをキープさせることで、厚みがあり隙のない音楽が作り出されますが、今回のカヴァコスのような演奏もまた独特の響きが美しいです。古いスタイルのはずですが、とても新鮮に感じます。
スタイルはさておき、カヴァコスの演奏はやさしく透明感のある音色でとても上品です。ヴィブラートは控えめで開放弦を多用し、熱いわけでも暖かいわけでもクールでもない、とても優雅な演奏です。
この人はとんでもない技術の持ち主ですが、その技術をモーツァルトをとにかく美しく弾くためだけに使っているという感じです。ヴァイオリンを弾く人、特にその技術までを理解する人であればその「目立たない素晴らしい技術」に驚嘆せざるを得ないでしょう。
カヴァコスの技術といえば、名教師ギンゴールドが初めてカヴァコスの演奏をテープで聴いた時、あまりの技術の完璧さゆえに何らかの編集や加工を疑い、テープの解析を依頼したそうです。もちろん彼の技術そのものだったわけですが(笑)。
ボウイングはまるで呼吸のようで、ボウイングというより「弓使い」という言葉がふさわしいですね。ヴァイオリンの演奏では出すところ、たとえば音量だったり、アクセントだったり、ほんの一瞬の脱力&アタックというような要素の使い方や技術が、演奏の魅力やセンスに対して非常に重要ですが、むしろこの演奏では抜き方や収め方というところに非常に魅力を感じます。アウフタクトや強拍のとらえ方も独特、というより自分の勉強不足を痛感します(笑)。
カデンツァは全部自作だそうです。少し前まではヨアヒムやダヴィッドなど昔の演奏家のカデンツァを使う場合が多かったように思いますが、最近はカデンツァを自作する演奏家が増えてますね。本来あるべき姿といえばそうなのですが、僕には無理かも。昔ベートーヴェンのカデンツァ作ろうとして挫折したような気が(笑)。
オーケストラのカメラータ・ザルツブルグも良いですね。アンサンブルや演奏の質だけでなく、ソロとの統一感というところを非常に感じます。これはカヴァコスが弾き振りをしているというのもあるのでしょうが、オケの意識の高さがあってこそでしょう。
録音もいいですね。良い音に聞こえるというよりは、とても演奏を聴きやすい録音です。最近の録音はコンサートホールの客席で聴いているのを模してか、マイクが遠くて残響の中にソロが埋もれるようなものが多いですが、そういったものとはちょっと違うようです。ちなみに2006年録音なので非常に新しいですね。
ということでカヴァコスのモーツァルト、とても気に入っていてよく聴いています。他にもクレーメルやオイストラフも名演だと思いますが、まだまだモーツァルトは弾く方も聞く方も浅いので、少しずつライブラリを増やして行きたいと思います。
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