加藤えりなさん ヴァイオリン・リサイタル

ヴァイオリン

9/15(火)に東京文化会館小ホールで行われた、加藤えりなさんのリサイタルを聴きに行ってきました。

加藤さんとは室内楽やオケで何度かご一緒していて素晴らしい演奏家だということはわかっているのですが、リサイタルを聴くのははじめてなのでとても楽しみでした。

曲はタルティーニの「悪魔のトリル」から。もう最初の1小節で魅了されました。この1楽章を魅力的に弾くのは本当に難しいと思うのですが、エスプレッシーヴォすぎずシンプル過ぎず、一音一音色合いを変えながらていねいに弾いていく姿は本当に見事で、すっかり惹きこまれました。その後も時にエネルギッシュだったり繊細だったり多彩な様々な表情を見せてくれるのですが、この曲だけでリサイタルが終わってもきっと満足出来るだと思うくらい、本当に素晴らしい演奏でした。

バッハも本当に見事で・・。無伴奏3番のソナタを弾いたことがある人なら誰でもあの最初のアダージョで聴かせることがどれだけ難しいことなのかわかると思いますが、単音でもあのように弾くことはなかなか出来ないだろうと思うくらい音楽的で、感動すら覚えました。私の大好きなラルゴとアレグロアッサイも見事で、この前半の2曲だけでも至福のひとときでした。

後半もイザイのポエム・エレジアックから。G線をFまで下げて調弦するという変わった曲で、弾く時混乱しそう、練習するのが大変そう、調弦の6度は純正?ピタゴラス?その間を取る?、なんて弾き手の立場で余計なことを考えてしまいましたが、それはさておき表情豊かで素晴らしかったです。G線もテンション下がって独特の音になりますね。しかし調弦は以前マーラー4番のソロで苦戦したことがあるのでついつい最後まで気にしながら聴いてしまいました。

最後のクロイツェル・ソナタ。これは大抵は激動の1、3楽章に惹きこまれ2楽章は箸休めのようになることが多いのですが、決して箸休めではありませんでした。長大なヴァリエーションは退屈しがちですが、その一つ一つが本当に魅力的で、退屈どころかどんどん次の変奏が楽しみでなりませんでした。2楽章がこんなに楽しいと思えたことは今まであまりなかったかもしれません。もちろん1と3も素晴らしかったのですが、あまりにもこの2楽章が神懸かっていたので、今でもその音が頭のなかで再現されるようです。

アンコールはフォーレの子守唄とサラサーテのサパテアード。対照的な2曲ですが、どちらも楽しい演奏でした。もっともっと他にも聴きたかったですが、クロイツェルを弾いた後にアンコールを弾くというだけでも大変だったと思うので、むしろ2曲も弾いて下さって嬉しかったです。

加藤えりなさんの演奏は、派手なパフォーマンスもなく、大人しすぎることもなく、音の一つ一つが丁寧かつ魅力的という私がとても好きなタイプということもあるのでしょうが、帰りの電車の中も、翌日になってもまだ演奏の余韻が残っているほど素晴らしいリサイタルでした。素晴らしいことがわかっているのにそれ以上素晴らしいものを聴かせてもらえるなんて、なかなかありませんね。

うちの生徒さんも何人か聴きに来られましたが、他の生徒さんにも聴かせてあげたかったです。みなさんお仕事、学校、はたまた自分の演奏会本番などでなかなか来られませんでしたが・・。

何か力をもらったような気がしますので、私も今まで以上に精進していきたいと思いました。

また次回も楽しみにしたいと思います。

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