パッシオーネ(Passione) ファーストインプレ
ピラストロが最近リリースしたガット弦、パッシオーネを試してみました。
パッシオーネは、ピラストロによると今までのガット弦に比べて以下のような特長があるそうです。
・湿度などコンディション変化に強く狂いにくい
・ブレークイン(慣らし)が短くて済む
ガット弦は音は良いのですが、湿度によって狂いやすく切れやすいため、多少音に目をつぶっても安定感のあるナイロン等の合成弦を使う方が多いです。
かくいう僕も昔はオリーブでしたが、最近はオブリガート、エヴァピラッツィ、ヴィジョンチタニウム、コレルリアリアンスヴィヴァーチェといった優秀な合成弦、あるいは定番のドミナントなどを使っています。
でそのガットの欠点を克服したというのがパッシオーネだそうですが、早速、というよりリリースからだいぶ経ってますが張ってみました。
まず張った直後の感想。張った直後のオリーブと同じく覇気がないというか、ちょっと経たないとまともな音がでない感じです。
松脂を付け直して少し弾いていると段々と鳴るようになってきました。この辺もオリーブと同じですね。また、パッシオーネはオリーブなどに比べてブレークインを短縮したとありますが、あまり感じませんね。最初はとにかく弾いていると下がりまくります。
ヴィジョンシリーズは張った当日、エヴァピラッツィなどの多くの合成弦も翌日から本番OKという感じですが、とてもそうはいきませんね。
個人差や楽器の差はあると思いますが、個人的な意見として、調弦が狂うリスクよりも音を重視した場合、ヴィジョンやエヴァピラッツィでは張ってから3日が最高のコンディションだと思っています。今までも特に重要なコンサートでは常に本番の前日~3日前くらいに弦を張り替えてました。
さすがにガットではそうはいかず、パッシオーネでは3日前でも怖い感じです。
さてそれより重要な音や弾き心地ですが、僕の楽器には相性が良いようです。音色は明るく、フレッシュで倍音も多く、反応も良いです。ガットだけあってガットのテイストもあります。それなりに音の深みもあり、底の深さを感じます。
G線は開放弦が非常にいい感じで、エヴァピラッツィよりも響きが良いです。ただし指を押さえた音は少し曇り、エヴァピラッツィの方が良く感じます。
逆にDとAは開放弦は軽くてあまり良くないんですが、指を押さえた音、特にヴィブラートをかけた音が非常に表現力豊かで、エヴァピラッツィよりも良い感じです。
・・・ってなぜ比較対象がエヴァピラッツィなんでしょう(笑)。それはパッシオーネがあまりガット弦ぽくないからで、自然とそうなってしまったのです。もちろん音量や張りはエヴァピラッツィよりははるかにおとなしいですが、なんとなく少々くたびれたエヴァピラッツィが良い比較対象になってしまいました(笑)。
パッシオーネはオリーブやオイドクサのような生粋のガットという感じではなく、どちらかというと合成弦にガットのテイストを加えたという印象があります。もちろん正真正銘のガットなので変な話ですが。
そのため、オリーブやオイドクサのようなガットらしさを期待していると物足りなく感じます。オリーブのような輝きと味わいの調和、オイドクサのようなウォームトーン、というような強烈な個性、独特の味というのはあまり感じません。むしろ無難にいい感じという印象。合成弦の扱いやすいさやピンと張り詰めたレスポンスが好きだけど、ガットのテイストが欲しいという場合には非常に合うような気がします。
オブリガートとの比較では、全体的にはオブリガートの方が扱いやすく感じ、全体的にパッシオーネの方が弓圧を必要とする感じです。その代わり、パッシオーネの方が底が深く、特にオブリガートの欠点であるフォルテ方向の奥行きではパッシオーネの方がはるかに限界が高い感じはします。僕的にはオブリガートが物足りなく感じてしまうため、オブリガートとの比較ではパッシオーネの方がいいです。ただ、GやD線あたりで弓圧をかけた状態でフォルテで短いストロークの速いデタッシェを弾くような場面では、エヴァピラッツィのほどは音はついてこない感じです。
オリーブの標準ゲージが最近の合成弦に対してGやDが弱すぎる(海外などではGとDはリジッドを推奨しているお店が結構あります)というところは解消されていて、標準ゲージでも非常にしっかりしています。楽器自体に剛性感がありオリーブではリジッドを使っても鳴らしきることができなかった楽器に張ったんですが、パッシオーネはきっちり鳴らしきることが出来ました。これまた逆に言えば、オリーブの標準ゲージでバランスの良かった楽器では、GやDが太すぎて反応が鈍く、音も弾き心地も良くないかもしれませんが。
E線はわりといいですね。響きがありますがあまりキンキンしない感じです。
まだ使って数日なので細かいことはまだまだこれからだと思いますが、いろんな意味で賛否の分かれる弦だなと思いました。僕のように強めの合成弦を張っている方には好印象かもしれませんが、もしかしたらオリーブ党の人、というよりオリーブが非常に合っている楽器を持つ方にはあまり受け入れられないかもしれません。
そう考えると、「今まで合成弦を使ってきた方に・・」というピラストロの狙い通りの弦になっているかもしれません。
どんな楽器にでも合うドミナントなどに比べ、楽器との相性が出やすい弦なのかもしれませんね。ヘリコアなどは張った楽器によって受ける印象が天と地ほどの差がありますし、オリーブやオイドクサだって合わない楽器には全く合いません。それを考えるとパッシオーネは結構良い弦かも・・・D線の音は今までの中で一番好きです。あとは値段さえ安ければ(笑)。
またしばらくしたらレポートします。僕の中では既にエヴァピラッツィとパッシオーネのコンペティションが始まっています(笑)。
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