カーボン弓「Coda Bow Diamond SX」
先日、生徒さんがCoda BowのDiamond SXを購入したのですが、試奏の印象が想像以上に良かったので、少し書きたいと思います。
Coda BowのDiamondシリーズは2007年の弦楽器フェアで初めて弾きましたが、それまでのClassicなどに比べてより自然になったなという印象でした。さらに2008年のフェアでも再度弾き、何ら普通の弓と変わらない感じを確認していました。
さてそのCoda Bow試奏時に用意していただいたのは、Coda BowのDiamond GX(定価14万)とDiamond SX(定価10万)です。その下にNXというのもあるのですが、値段以上にGX&SXとの差がありすぎるので最初から候補に入れませんでした。
まずは音色ですが、GXはブリリアントでやや粗く、SXはややおとなしめでしっとり。価格相応ながら取り立てて悪い感じはありません。同価格帯のフェルナンブーコ弓の中でも音色の良いものなどと比較したら負けますが、少なくとも「カーボンの音」なんていうものは感じません。どちらも非常に強い弓で、特にGXは粗さと引き替えに非常に音量があります。
アルシェTO-Soloと比べると音のクリアさなどではかなり落ちますし、弾き始めた瞬間には野暮ったさも感じます。しかし15~20万のフェルナンブーコ弓はもっと野暮ったくて、運動性が悪いわりには音色も大したことがないことを考えると立派なものです。
しかし特筆すべきはその運動性。レスポンスの良さや跳ばし弓のコントロール性、ボウイング時の弓の落ち着き、そして安価な弓が苦手とする弓先からのアタックなど完全にクラス違い。
このDiamondシリーズのターゲットとして考えられるのは、初心者~中級者が技術を学ぶための弓。そのためにはきちんとした基本性能があることがまず必須ですが、30~50万円クラスでもこれらより操作性が劣る弓も多いことを考えると、学習用としては十分すぎるくらいです。
また、セカンドボウとして考えた場合は、メインの弓を練習やコルレーニョで消耗させないためにという使い方が中心になるかと思うのですが、その場合も音色よりもメインの弓との操作性の差の方が気になります。特に、コルレーニョがある曲を本番で弾くときは管楽器のように楽章で弓を持ち替えるわけにいかないので、ワンステージを乗り切れるだけの能力が必要ですが、そんな時でもDiamond GX&SXなら音色にさえ妥協すれば安心して演奏を続けることが出来そうだと感じました。
弓を選ぶこととは音色と操作性の妥協点を見つけることともいえるのですが、価格相応の音色を持ちながらも操作性に秀でたDiamond GX&SXは、学習用、あるいはセカンドボウとして非常に良い妥協点が設定されているように思います。
それとDiamond GX&SXで評価したいのが、実にオーソゾックスでバランスのとれた作りになっているということです。何かを犠牲にして弾きやすさに振ったりすることなく「普通であること」というのが、結果的には良い操作性、運動性を生み出しているので、他の弓との持ち替えなども違和感を感じません。
あまり褒めちぎってもあれですので気になる点を挙げると、まず弓の方向性として非常に強い弓であることとシャープであること。この価格帯としてはむしろメリットになるとは思うのですが、オールドボウのしっとりとした弾き心地とはずいぶん違うことが理解する必要があります。
セカンドボウとして考えた場合、メインで使っている弓が音色重視で操作性を妥協しているようだと結構違和感があるかもしれません。特に消耗してコシが無くなってペナペナになってしまったオールドボウ(それでも名弓だと結構な値段します)をメインに使っていると、ボウイングがそれをリカバーしようとして普段から粗い方向に行っている場合が多いので、余計にDiamondシリーズが弾きにくく感じるかもしれません。
あとはメインボウとして考えると、やはり音色が物足りないかもしれません。特にカーボンボウではコストパフォーマンスをアピールする宣伝文句が多いので、音色まで期待してしまうとがっかりする可能性があります。残念ながらDiamondシリーズは音色面でのコストパフォーマンスは特別良いわけではありませんので(悪くもありませんが)。
ちなみにGXとSXの違いですが、操作性はほぼ同じで音色の違いがあります。
メーカーの謳い文句やWebで検索して出てくる意見などは「GXの方がSXよりもより柔らか」となっていますが、正直正反対の印象を受けました。今までにGXもSXも3本ずつ弾いていますが、張り具合を変えたり松ヤニの種類が変わったりしてもその傾向は変わりませんでした。GXは非常に強く、音もやや雑音混じりでブリリアント。SXはそれに比べると粗さが取れてややソフト。しっとり感もSXの方が上でした。ちなみにSXがしっとりといっても、それでもまだ標準的なフェルナンブーコに比べたら粗くて強いことは確かですが。
でGXとSXのどっちが良いのか、と言われたら個人的には値段関係なくSXの方が良いと感じました。高いものには高いだけの理由がありますが、必ずしも高いものが自分の好みに合うとは限らないのは何の世界でも同じです(笑)。
なおカーボンといえばドライカーボンのArcusも有名ですが、初心者~中級者向けとしては価格が高すぎるし、セカンドボウとしては通常の弓と重さが違うので持ち替えがしづらいし、かといってメインとして使うのは勇気がいる、ということもあってなかなか踏み切れませんね。
ということでさんざん試奏の感想やら意見を書いてきましたが、結局自分でもDiamond SXを買いました(笑)。



買ってわかったことですが、付いている弓毛の質、張り方、共に良くありませんね。毛は太くてばらつきがあり、張り方は・・・ねじれてたりで下手くそ(笑)。これは毛替えするだけでかなりの音質改善が期待出来そうな気がします。
練習用、コルレーニョ用、レッスン時の貸し出し用、狭い場所(弓をぶつける可能性のある部屋、オーケストラピットなど)での練習&本番用などで活躍してくれそうです。
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先生の以前の記事に動かされて、ARCUSカデンツァを買いました。当初考えたアルシェPE TRAD-Gとほぼ同価格である点も決め手になりました。Codaについても書かれていましたね。
カデンツァの特徴ですが(それまでのアルシェPE1004との比較、価格差が少々あります)、軽くて持つのが非常に楽であること、雑音が減ったこと、線の太い音が出るようになったことです。約10g軽いですが、違和感はあまり感じません。
カーボン弓の場合は人工物ですので、製作マニュアルに従って製作し、その後、試奏して選別すれば、一定品質のものを得やすいはずです。この点、フェルナンブーコは天然物であるため、材料の入手、選択の問題があります。
弓を選ぶのは、素人にとって、楽器以上に難しそうですが、カーボン弓の場合、当たり外れが少ないのではないかと思います。それと強度がありますので、安心感があります。上達してから、使い続けるかどうかは別にして、カーボン弓の利点は大きいと思います。
>化学系技術屋さん
Arcusのカデンツァ、レポートありがとうございます。
Arcusはセカンドボウとしては使いにくいところがありますので、カデンツァのようにメインで使える弓を選ぶのが良いのかもしれません。
Arcusはゆるく張ったときと強めに張ったときの差がすごく大きかったような覚えがあります。Codaの場合はどう張っても強さが目立ってしまうのですが、Arcusはそのあたりも良いところなのかなと思います。
雑音の少なさというのはCodaはあまり良くないです。太い音は出るのですが・・。
何をとってもArcusがうらやましく思えてしまうCodaシリーズですが、値段が値段ですので仕方ないですね。Codaでもドライカーボンを使った良い弓を作ってもらいたいものです。
フェルナンブーコの代替とまではいかないかもしれませんが、強度や品質の安定度、環境に左右されないなどカーボンにはそれなりのメリットがあります。どんどん良い弓が登場することを期待したいですね。