Crowsonのあご当てにはヒル型と呼ばれる左右がセパレートされた金具が使われており、素材はシルバーで新品時はとても美しい光沢を放っています。
しかし金具は首部分に触れるため、私のような汗っかきだとシルバーはすぐに変色し、しばらく使っていると腐食してかなり残念な見た目になります。新品の輝きが保たれるのは最初の数日だけ。女性の楽器の金具はずっと綺麗だったりしますが・・。
ということで、10年以上使っているこちらのRuggeriタイプのあご当てにチタン製の金具を装着しました。
バイオリンJPさんよりサンプルご提供頂いたチタン製あご当て取り付け用の金具ですが、上部はノーマル形状、下部はセパレートというちょっと変わったものです。チタンで一般的な落ち着いたマット仕上げがされています。横穴を空けて取り付けるタイプなのでどんなあご当てにも容易に取り付けできますが、今回はヒル金具の付いていた台座の窪みの穴埋めが必要だったのと、チタン製ということで取り付けてからアームを曲げての角度調整が難しそうで横穴の確度がシビアと思われたので、加工を文京楽器さんにお願いしました。
見事に仕上がったこちらの金具ですが、軽めのフィッティングが合うIveにぴったりで明らかに楽器の鳴りが良くなりました。楽器の鳴りを阻害せず、より楽器が自由に響く印象です。ダンピングの効いたCrowsonの重めのフィッティングが合う、あるいは好きな方にとってはあまりよい方向ではないかもしれませんが、楽器も私自身も軽めのフィッティングが好きで、あのRuggeriタイプの形状が私に必要でCrowsonを使っているので、このチタンの金具は成功でした。
ちなみにこちらのあご当ては陳昌鉉さんに裏掘りをして頂いたもので、チタン金具を付けたついでに重さを量ってみると・・・、
驚きの44.5g！購入時は62gだったので大幅な軽量化になりました。手に持った感じも標準ののCrowsonのものに比べても明らかに軽いです。裏掘りといっても厚みをしっかり残した状態で強度も十分な状態ですので、Crowsonの密度の高いツゲ材とこの重さが実現できたのは大きいです。
チタン金具自体の重さは10.6gと非常に軽量です。
外したCrowson純正のシルバー金具は22.7gもあります。ストックの状態ではあご当て本体約40g、金具約22gというところでしょうか。
それと、今回金具を取り付けた位置ですがヒル金具とほぼ同じ、左右が開いた位置に取り付けました。が、上側ノーマル下側セパレートの金具の装着例を見ると(菊田浩さんの楽器とか)、ノーマル形状とほぼ同じ狭めの幅に取り付けられています。横穴を流用できるという理由もありそうですが、後で考えたら左右の金具をある程度狭くした方が締め付け位置がセンターに寄り、エンドブロックにより近い位置を締めることになるので音響的に有利かなと思いました。機会があったら試してみたいと思います。
軽量化といえば、テールピースの裏掘りあるいは最初からそういった加工がすでにされているテールピースをいくつか試したことがありますが、私が試した楽器ではあまりよい印象を持ちませんでした。大きく共振する部分だからかもしれませんが、軽量化のメリットよりも強度が落ちることのデメリットのほうが大きいように感じました。Iveに最初から装着されていたBogaro&Clementeのブラックウッドのテールピースは、裏掘りでなく裏側全体をわずかに薄く削ってありました。強度を落とさずに少しでも軽量化しようとしたのかもしれません。
それとテールピースが楽器によって軽いほうが良いのか重いほうが良いのかの簡単な判断を、私は弾きながらテールピースに左手で触れることで行っています。テールピースに触れて振動を抑えて鳴りが悪くなれば重くするのは良くない＝軽くしたほうが良い可能性、触れてテールピースの振動を抑えて鳴りが良くなれば重くしたほうが良い可能性、がそれぞれあると思います。もっとも重さを変えたのとは違い直接振動を止めてしまっているので、正確にはジグムントヴィッチさんのように小さな粘土などをおもり代わりにくっつけてみるほうが良いかもしれません。
脱線しましたが、すでにこのCrowsonとチタン金具の組み合わせで1年近く経ちますが、金具は腐食して変色することもなく新品同様です。当たり前といえば当たり前かもしれませんが、ニッケルもシルバーも見た目でだけでなくだんだんネジが腐食してボロボロになって動かなくなるのが常でしたので。機能面もそうですし、ずっと綺麗なまま使えるのは嬉しい限りです。
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